ヨーロッパを見る視角 (岩波現代文庫)



ヨーロッパを見る視角 (岩波現代文庫)
ヨーロッパを見る視角 (岩波現代文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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ヨーロッパにおける「世間」の解体と「個人」の成立


 ヨーロッパ中世(社会)史の碩学である著者の阿部謹也・一橋大学名誉教授は、去る06年9月、惜しくも逝去されたが、当書は、1995年に開催された岩波市民セミナー「ヨーロッパを見る視角」の講演に由来しており、著者の「ヨーロッパ社会を捉える基本視角を提示し、日本との比較において大きな展望を述べた作品」(安丸良夫・一橋大学名誉教授の「解説」)である。また、晩年における著者の問題意識も、十分くみ取れる内容となっている。
 
 ドイツ中世史や日欧社会(史)の日常生活次元での比較研究など、阿部氏の学問的な業績については今さら語るまでもないのだけれども、本書に関しては、私は要所としてヨーロッパにおける「個人」の成立過程を挙げたい。ちなみに、この11世紀以降の「個人」の成立に伴って、ヨーロッパ風の「恋愛」も12世紀頃から始まったようだ。それはともかく、現代にまで通底する思想としての「個人」を生み出したモメントは、一体何だったのか…。

 『生きるための経済学』の著者・安冨歩氏は、現代における「自由」のアポリアを経済学等を通して剔出したのだが、この「自由」と裏腹の関係にあるのが「個人」の問題であろう。この「個人」と対極する概念が、「長幼の序」「贈与互酬関係」等を原理とした、阿部氏のいう「個人と個人を結びつけている人間関係の絆」としての「世間」(p.19)であり、11世紀以前のヨーロッパは、日本的な集団優位の「世間」が支配した社会であった、とする。

 そして、著者は「世間の解体をもたらした一番大きな原因は何かというと、キリスト教の普及にあった」(p.89)と見る。具体的には、「マタイ伝」や「ルカ伝」なども引用し、「すべてを捨てて自分に従え、親や兄弟を捨ててしまえ」という「絶対命題」(pp.90?91)が「世間」を解体し、「個人」を誕生させたと勘決する。こうしたキリスト教の教義が人間を作り替え、「その後のヨーロッパの性格を決定的に規定」(p.97)した、と言って良いのだろう。

「個人」と「恋愛」の発見・アベラールとエ口イーズの物語

私たちが西洋史を学ぶ動機というのは、他者としてのヨーロッパを学ぶことで日本を知る鏡とするというのと、もはや日本文化と切り分けできないほどに浸透した欧米文化の淵源を知りたいというのと2つ考えられると思うが、それらにひとつの回答を示してくれる良書である。
「恋愛」や「個人」というものは、中世ヨーロッパにおいて発見された。
その中でも本書の白眉となる「アベラールとエ口イーズの物語」についての話が興味深かった。聖性を守るべしというキリスト教の教義から逸脱したアベラールとエ口イーズの強い背徳感が、相手のみを強く求めるという近代的な恋愛の心性を生むもとになった。しかし、アベラールは初め学者ではあったが聖職者ではなかったという。また、二人が長いやり取りの中で子供のことをまったく話題にしていないという点も何かを示唆している気がした。
一方で著者の日本文化論は首をかしげざるをえない。著者は「世間」を重視するが、ベネディクトの『菊と刀』を引用しておきながら、今まで「世間」について学問的に採り上げた者はいなかった、と堂々と述べているのはどういうことだろうか。
『菊と刀』第5章「過去と世間に負い目を負う者」を読めば、日本人は生まれながらに一生かかっても返済できない負債(=義理)を負って生まれてくるのであって、世間は負債を負う対象のひとつに過ぎないことがわかると思うのだが。
個人意識の成立に関する日欧比較が秀逸


ヨーロッパにおける社会が、「個人」を基点とした「個人の集合体」だとすれば、
日本のそれは逆向き、つまり所与としての「世間」の下に個人がぶらさがっており、
その世間は個人の力ではどうにも変えようのないものであると説く著者の論点は面白い。
また、その構成要素である「個人」の成立過程についても、
ヨーロッパでは中世の国家権力であった教会での内面告白により、
自己を深く認識した結果として強烈な個人感覚が成立したのに対し、
日本ではこれまた世間なる不可思議な尺度から「相対的」に導かれる基準が
自己を規定してきたと説いており、その底部にあるヨーロッパの教義と
日本の伝統・慣習をあざやかに対比している。

本書は実際の講演を元にまとめたものであるが、
重くなりそうな内容を 簡潔・明快な切り口で述べており、
リラックスして通読できる一冊に 仕上がっているのではないだろうか。


難しい主題だが、さらに深いところを追求したくなる

 1995年の岩波市民セミナーでの講演をまとめたもの。ヨーロッパでは12世紀頃までは”世間”の中で生きていた人間が”個人”や”市民”として変わっていったとの史観から、”世間”が継続する日本と対比する視点を解説する。

 ヨーロッパに残る”世間”の痕跡。という視点は興味深いが、それにとどまらずに当時の社会生活の解説などを取り込んでいることで、話題としての発散を感じる。貴族や都市での生活、村落の様子や古い伝説など、教養的な話題が多く含まれる。
ものを見る眼

1996年刊行本が昨年の暮れに岩波現代文庫で復刊されたもの。
講演をもとにした論考なので、非常に読みやすい。ぼくがどうして阿部先生にこれほども惹かれるかというと、ひとつにはその語り口にある。その語り口が堪能できます。遺著となって話題となった『近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本』(朝日新書)よりも、内容的には面白いと思う。自らの頭で考え続けたひとりの歴史家。借り物ではない。その言葉ひとつひとつにこびり付いてる何かに、やはり惹かれてしまう。でも、独特な語り口に違和感を感じる人も多いかもしれない。




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